北村たちの処置により一命をとりとめた患者さんと北村
看護師のなかでも特に高度な医療知識と技能を持つ看護師のスペシャリスト・「専門看護師」。9つある専門分野の中で、命の危機に瀕(ひん)する患者を看るのが「クリティカルケア看護」。その第一号の一人である北村愛子が、何よりも大切にしていることが、「患者と向き合う」こと。
「病気でその場にいらっしゃる方々は、自分の病気からは逃げることができないと思う。どんなに苦しくても向き合いながら一緒にいること。生きていくことを支えるのが、仕事」
通常、看護師は、担当の病棟が決まっているが北村には担当がない。循環器、呼吸器、脳神経など病棟を問わず重篤な患者を受け持つ。北村は、一日中、病院を走り周りながら、患者の容態に目を配る。そこには、意識がない人や重篤で言葉が話せない人が少なくないが、北村はごく普通に話しかけ、手を握る。そして、呼吸の状態や肌の張りなどから繊細な病状の変化を読み取る。
患者家族を見守る北村
日々、命と向き合う看護という仕事。北村の目の前にいるのは、生きるためにぎりぎりの戦いを続ける患者とその家族だ。北村は、自分の仕事の意味を「希望をつなぐ」ことだという。
この日も、危機的状況は脱したものの意識は不明瞭(りょう)な状態が続く患者とその夫を、医師の許可を得て集中治療室から病院ロビーで行われたクリスマスコンサートに連れ出した。病状が急変する可能性はあったが、北村があえて、夫婦で久しぶりの穏やかな時間を過ごして欲しいと決断した。
医療とは何か、看護とは何か、無力感にさいなまれた日々もあった
21才で看護師になった北村。集中治療室で働いて4年目、幼い少女の死を経験し、自分の無力さを痛感する。「どう医療ってあればいいのか、看護ってどうあればいいのか。何もできないなと」。北村は、30才のとき、看護専門学校の教員に転職。
再び、看護の現場に戻るきっかけとなるのが、大切な友人の死だった。
それがきっかけになって、北村は一つのことに気づいた。「看護に限界はなく、その限界を作っていたのは自分だった」。
北村は再び、看護の仕事を極めるため、「専門看護師」の道を突き進む。
命の分岐点にある患者を支える
昨年暮れ。
北村は、新たに一人の深刻な患者を抱えていた。患者は、重症な肺炎で危険な状態にあった。毎日、病室を訪ね、容態を見守る北村。体力や免疫力の低下によって身体が衰弱していくことを恐れていた。
数日後、肺炎がよくなる兆しをみた北村は、一つの決断をして、行動にうつす。
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